似たもの同士

子供の頃。祖父の家に行って夜遅く帰るときはいつもタクシーだった。
父は車を持っていなかったから。
帰り道はほとんど住宅街でその頃だからコンビニなんて無く夜道は真っ暗だ。
たぶん5歳頃の僕は車の中の闇が怖くて、ふと目についたタクシーの天井に付いた室内灯をつける。
信号待ちでタクシーが止まる。タクシーの運転手さんは室内灯を消す。
タクシーは走り出す。僕はまた室内灯をつける。信号待ちでタクシーが止まる。またタクシーの運転手さんは室内灯を消す。僕がまた室内灯をつける、運転手さんが消す。
3回目ぐらいで「どうやら運転手さんは室内灯をつけられるのが嫌らしい」と感じた僕は社内の闇の中で静かに小さくなっていた。
(普段車に乗らないから家族は何も言わなかったのだ)
この間夜に家族を乗せて自分の車で走っていたら子鬼が室内灯をつけたのだ。
僕には子鬼の気持ちがすぐ分かったのだ。なんか可笑しかったねぇ。口には出さず笑っていた。
そして子鬼に言った。
「子鬼さ、暗いのが怖いかい?でもここには父さんも母さんも一緒にいるから大丈夫だよ。その室内灯をつけられると運転していて前が見えにくくなるんだよ、危ないから室内灯を消してくれるかい?」


僕の母も一緒に乗っていたがあのときのことを覚えているだろうか。